10-15 Wed , 2008
受け入れはできていない、と思う
国民カミングアウトDAY

「こんなニュースがネットに載るようになったんだなあ」とちょっと驚いていることは確かなんだけど、今、カミングアウトしまくってるレズビアンのわたしにとっては、この記事はちょっと「脳天気」過ぎるような感じがしてならない。

この記事にもあるように、「National Coming Out Day」が設定されているアメリカは、日本より性的少数者(主に同性愛者)に対する偏見が強い。過去、アメリカは'50年代~'60年代、「ソドミー法」によって、警察による囮捜査があり、普通のいわゆるゲイバーなどでおとなしく酒を飲んでいる客に対しても、すべて逮捕されしょっぴかれたことや、ヘイトクライム(憎悪犯罪)で殺されたり、また、今現在では、キリスト教保守派による「攻撃」があり、「目に見える」偏見がかなりある。

その結果、同性愛者を初めとする性的少数者は「自らの人権」を獲得するために立ち上がらざるを得なくなり、その結果、40年前とは比べものにならないほど「進んで」いるところもある、と言うわけだ。記事中に、性的少数者のための学校がある、と書いてあるが「ハーベイ・ミルク高校」はそのうちの一つだ(というか、わたしはこの一つしか知らなかったけど、ミルウォーキーにもあったのね)。

「ハーベイ・ミルク」とは、ゲイとカミングアウトして、サンフランシスコ市の市政執行委員で'78年にサンフランシスコ市長と共に前の執行委員に暗殺された人だ。彼は、市政執行委員になる際、自ら「もし自分が暗殺されたときに備えて」遺言を録音していた。

そう、アメリカではゲイが公職に就ける反面、命を奪われる危険性があったのだ。これは、アメリカの黒人公民権運動の先頭に立っていたキング牧師が暗殺されたのと全く同じだ。今のアメリカでのゲイの権利活動の歩みは、黒人の公民権運動の動きと似ており、いくつかの州で「同性婚」が認められ始めている(この間のコネティカット州で3州目)。

アメリカでのこれだけの「進歩」は、逆に「反対派」の力も強いこと、同性愛者自身が危険にさらされていること、で、当事者が団結せざるを得なかった、という特徴を持っている。

一方、翻って日本のことを考えると、未だ「カミングアウト」している国会議員はいない。それは、今の国会議員、すべてが異性愛者というわけでは決してなく、ただ「カミングアウト」できないからで、当事者の国会議員は存在する(もちろん、都道府県議にも市長村議にも存在するだろう)。しかし、日本ではまだまだ公職に就いたものが「カミングアウト」できない状態だ。

だが、もし「カミングアウト」しても、ハーベイ・ミルクのように暗殺はされないだろう。ただ、今まで「誰も」自分が「同性愛者だ」ということをカミングアウトした国会議員が存在しないため(過去はいた、大阪府議だけど(苦笑))、できないでいるのだろう。誰でも「第1号」にはなりたくないものだ。そしてそのような人を「カミングアウトできない情けない人」とはわたしは言えない。私人ならともかく、公人として「カミングアウトをする」ということが、どういうことか、カミングアウトして生きているわたしにはだいたい想像できるからだ。

また、ヘイトクライムについても、確かに日本でもないわけではない。が、数が非常に少ないのと、報道のされ方が曖昧で(同性愛者と言うことを理由にして殺された、と書くと殺された方のプライバシーに関わると思っているのだろう。実はそれが一番の問題点なのに)、国民一般には「普通の殺害」(言い方が変だけど)ということで伝わってしまう。これでは日本で「ヘイトクライム」が起きている、なんてことを知っているのは、当事者の中でもそんなにいないだろう。

確かに日本の中高生の同性愛者(または性的少数者)で「男らしくない」だの「オカマっぽい」だのと言われ、いじめられている現状がある。が、それは個々の問題として、全国的な繋がりを持たない。いじめられている人は、それこそ「この世で自分一人」だと思って生きている可能性もある。それは、大きな悲劇ではあるが、今現在「日本の同性愛者の人権団体」というものが、このようなことに対して動いていない以上、いや、日本には「同性愛者の人権団体」さえない状況で、現在いじめられている彼らはいじめられ続けるしかない。

そして日本の場合、アメリカと違い「目に見える犯罪」や「目に見えてひどいことをされている」とは一般的に認識されていないので、わざわざカミングアウトして目立たなくても十分、生きていけるわけだ。これがいいのか悪いのかは分からないが。。

ただ、今、民放ではニュー・ハーフタレントやゲイであるとカミングアウトしている人もいるという(ってわたしはNHKしか見ないから、よく知らないんだけど)。ただよく分からないわたしが何とも言えないが、やはり「多くのゲイ」とはちょっと違う、女性の姿をしていたりすると、一般の人は「ゲイは女装するもの」とか、いろいろな誤解を生んでいるのではないかと思うし、あと、ゲイと性同一性障害がごちゃごちゃにされている可能性もあるのではないかと思っている。ここではゲイと性同一性障害の違いについて、長々と書く気はしないが(それでもその違いを知りたい人はここで。これはわたしが以前書いた日記(9月25日)だ。ただし、非常に長文なので注意(笑))。

カミングアウトはできる人からやればいい。わたしはそう思っている。できる人が、できる範囲で。無理をする必要はない。もちろん「自分を隠したくない」人はカミングアウトしていい。わたしも同じだから。ただ「もう自分を隠して生きていきたくない」という人間がカミングアウトを1回すると、死ぬまでカミングアウトをし続けなければいけない、ということがある。

同性愛者は見た目では分からないので、カミングアウトをし続けなければいけないのだ。これは結構、つらいものがある。なので、わたし自身はカミングアウトをしているが、古い友人(学生時代)はまだ「まだら」カミングアウトの状態だし、カミングアウトしていない友人たちにこれからカミングアウトしなければならないのかと思うと、ちょっとウンザリすることがある。また、これから知り合いになる人たちにももちろん、カミングアウトするだろうから、それもまたウンザリしてしまう。が、自分で決めた道だから仕方がない。

なので、カミングアウトを脳天気に推奨する気分にはなれない。

もちろん、「この人なら大丈夫」と思ってピンポイントでカミングアウトする、という方法もある。多分、そちらの方が一般的かも知れない。

いずれにせよ、本当は同性愛を初めとする「性的少数者」に対する偏見は日本にはちゃんと存在するが、それが見えにくいために、性的少数者としての団結力は弱い。そこが日本の性的少数者に対する一番の問題点だとは思うが、多くの団体が存在するものの、それは「点」でしかなく、いまのところ「線」では繋がっていないのが実情だ。

そのような現状で、性的少数者のための学校などできるはずがない、とわたしは思う。少々悲観的かもしれないが、当事者が動かねば、このような学校などできはしない。上から降ってくるものではないのだ。

日本とアメリカなどの諸外国とは、同性愛者の置かれた歴史的な立場が違いすぎるので、活動の参考には成り得ないだろう、というのがわたしの考えである。だったらどうしたらいいのか。これが今、わたしの一番興味のあることである、ということと、あとそれでも少しずつ動きは出ていること、が少し救いではある。

しかし、この記事のように脳天気に「公にカミングアウトしちゃおうよ」とは、わたしには言えない。まだまだ日本ではそういう一般人の受け入れはできていない部分があると思う。日本では殺しはしないが、影で噂をされて仲間はずれにされる可能性が今のところ、非常に高いと思われる。

-------------- ここから --------------
アメリカで10月11日は「国民カミングアウトデー」で、「レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)だって公言しちゃおうよ!」なる日。
米国以外でもスイスやカナダ、オランダ、ドイツでも同様にこの日を「表明日」としていて、英国は一日ずれて12日に設定されている。

何でこんな日が必要か? と言うと、一般大衆にLGBTという認識を広めるため、というのが目的らしい。同時に多数の場所でディスカッションなどを催し、世の中への理解を求めている。

シカゴでは、レインボー旗を車につけたお兄ちゃんたちや、ハーレーに乗った沢山のお姉ちゃんたちを見かけることになったが、同性愛の高校生や若者たちにとって、米国とはいえ、まだまだ厳しいものがあるのかもしれない。

というのは、シカゴLGBT公立高校が2010年に設立予定されている。
この学校の焦点は「イジメ」からの安全な避難場所を提供することで、同性愛者、両性愛者、トランスジェンダーに優しい高校というもの。
彼等のほとんどが落第や退学をしてしまうか、うつ症状に悩んでいるのが現状のようで、ストレートの高校生と比べると3倍もの自殺未遂経験者がいるらしく、それが改善されるという期待も支持者からはあるようだ。

実際、同様の学校がニューヨークやミルウォーキーにあるが、生徒たちはとてもイキイキしているように見える。LGBTということで毎日ハラスメントや身体暴力を含むプレッシャーに直面していた以前の学校とは違い、安全な場所で教育を受け、卒業証書を手にできる。彼等自身の人生とも向き合えるチャンスを与えてくれる場所でもあるという。

「隔離されるのはどうか?」というような反対意見もあるのは確かだ。
全ての子供たちがあらゆる学校で安全であるべきはず。イジメはいつの時代でも、同性愛者に限らず、どこの学校でもあるので、隔離せずに対処の仕方や、イジメ教育の方に力を入れてほしいという考えもある。

日本だとイジメのターゲットがはっきりしないので、専門の特別校なんて到底無理な話だと思うが、このカミングアウトデーの方はどうだろうか? 日本社会での受け入れ態勢はできているだろうか? (アメリカは州、市、地域によって学区があり、制度に違いもあると思うが、幼稚園年長~高校までは公立学校は基本的に入学金や授業料などもなく無料[国民・住民の税金で賄っている]で通学できる)
(シカゴ/あらた)
-------------- ここまで --------------

テーマ:性的少数者(LGBTIQ) - ジャンル:日記

22:43 | カミングアウト | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
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コメント
いろいろあるとは思うけど、ゲイで無い人ってゲイの事本当に分からないんですよ。
実際にゲイの人と話していたらああそういう事か、と納得したりできるんですが、その機会が無いとヘテロの目からみた文学作品とかAVなんかの同性愛者の描写でこんなもんかと思ってしまう訳で、間違った知識と偏見をそこから植え付けられてしまうのです。
大変だと思うけど、真実をもっと教えてほしい。
Posted by: うーん・・・ at 2008/10/16 01:27 URL [ 編集] | page top↑
>うーん・・・さん
コメント、どうもありがとうございます。
確かに当事者のことは当事者に聞いてみなければ分からないのは分かります。
わたしも「同性愛者」という当事者として、自分のことについては語れますが(注:だからといって、これが同性愛者全部の意見ではありません)、その他の当事者(例えば在日外国人の人など)のことは、わたしも本を読んで勉強して知識を得たり、その当事者の話を聞いてみなければ分かりませんから。

ただ、同性愛等、性的少数者のことについて知りたいと思ったのなら、「同性愛の基礎知識」等の本は出ています。本屋で社会学系のところにいけば、同性愛や性同一性障害についての本がたくさんあります。うーん・・・さんは、既にヘテロの人の書いた文学作品やAVについて、同性愛者の間違った知識と偏見を植え付けられると知っていらっしゃるみたいなので、もしかすると必要がないかも知れませんが。

また、当事者の人の話を聞きたいのなら「LGBT家族と友人をつなぐ会」(http://lgbt.web.fc2.com/)というのがあります。活動の中心は神戸で、時折東京にいらっしゃるのですが、これならば、当事者以外の人の参加もOKです。そこでいろいろな当事者の生の声を聞くことが出来ます。

もちろん、わたしもブログを通じて日々感じていることを書こうと思っていますが、これはわたしの意見や考えに過ぎなくて、もっともっと同じ同性愛者でも違う意見を持った人もいます。今はさまざまな性的少数者のブログもありますし、探してみたらいいかも知れませんね。

クローゼットの人のブログを読んでみたら、なぜカミングアウトできないのか、する気がないのかなど、分かるところがあると思います。

わたしはもう、結構開き直ってしまっているので(笑)、そこのところは全く別の印象を持つかも知れません。そのようなものをひっくるめて、今の性的少数者の置かれた日本の現状が分かるかも知れません。
Posted by: ron at 2008/10/16 12:15 URL [ 編集] | page top↑
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