10-07 Sun , 2007
わたしは何に護られているのか
あれはAPECのデモ行進が終了したあとだから、9月8日のことだ。デモ行進が終わったあと、わたしはホストの人たちと別れて、以前、現地のエージェントに教えてもらった日本の食料品店に初めて行った。そこで発見したのは、現地で出している日本語で書かれている無料の新聞だった。「へえ、こういうものがあるのか」と思って何気なしにもらって帰って家で読んだ。そうしたら、なんとそこにはこのようなことが書かれていた。

日本総領事館告知







「在シドニー日本総領事館からのお知らせ」
「APEC期間中に予想される混乱についての注意喚起」
「 9月初旬にシドニーで開催されるAPEC期間中には、当治安機関により、シドニー市内は広範囲に立入規制区域を設けるなど大規模な交通規制が敷かれることはご承知と思います。
 更に、APEC期間中には、豪州各地より各種の主義主張を持った抗議活動家達が集結し、シドニー市内で大規模な抗議活動を展開する計画をたてています。中でも最大規模の抗議活動は、9月8日に抗議活動を予定している団体で、推定1万人以上によるデモ行進を計画しています。同デモ行進は、9月8日午前10時、タウンホールを出発し、ジョージストリート・マーティンプレース・マッコーリーストリートを行進して、ハイドパークに至るというルートを警察に申請していますが、今のところ警察はそのデモ行進を許可していません。
 抗議活動団体は、デモ行進を取り下げる姿勢を見せていないことから、9月8日当日はシドニー市内において、警察当局と抗議団体との間に過激な衝突が発生する恐れが十分にあります。当地における邦人の皆様におかれては、デモ行進の混乱に巻き込まれて被害を受けることの無いように、デモ行進を見かけたらその場から速やかに立ち去るようお願いします。」

これを読んで唖然とした。だって、この文章、あまりにもおどろおどろしいじゃん!この文章を読む限りにおいては、デモ行進がとても過激で一般人に受け入れられていなくて、危害が及ぶようなことが起きて、とんでもないものに思える。でも、わたしが参加したデモ行進ってこんな風に書かれていたものとは全く違っていたのだ。中にはシュプレヒコールをあげていた団体もいたし、整然と歩いていた団体もいるけど、太鼓を叩いて、踊りながら楽しそうに行進していた人たちもいたのだ!

確かに中には数人の逮捕者や警察と衝突していたらしい。それはわたしはテレビのニュースで初めて「そんなこともあったんだ」と分かるくらいで、少なくともわたしがいたところは全く危険ではなかった。どういう話をしていたかは知らないが、中には穏やかに警察官と話している人さえ見かけたのだ。そしてわたしは包囲している警察官の表情からなんとなく「彼らもこういう仕事はもしかしたらしたくないのかな」と思われるほど、みな、軟らかな表情だった。東京プライドパレードでも何人か誘導している警察官をパレードしながら見たが、表情が軟らかかったのは、わたしが気がついたのはたった一人だけ、他の人は「職務上仕方がない」というような顔をしていた人たちばかりだった。ま、一般に人の表情というものは国によって変わるものなのかも知れない。こちらの人たちは、顔を合わせると必ず笑顔を見せるから。

しかし、在シドニー日本総領事館は一体、なんの権限があってこのような「注意喚起」をしたのだろう?あれからいくつもの現地で出している日本の情報誌を探してみたが(こっちにはたくさんあるのだ、そういう情報誌が)、少なくともこれに関してこのように書かれていたものはこれ一つだけ。この新聞は週1回、発行しているが、この前の週にはこのような注意喚起の文章は載っていなかった。そして、偶然にもその前の日にわたしは在留届を出そうと、在シドニー日本総領事館に行ってきたが、このようなことを書いてある張り紙は見なかった。そう、もし張り紙がしてあるならば、この「注意喚起」は単なる「注意喚起」ではなく、日本国(この場合は外務省になるのか)の権限でそう言っていることになる。が、それを見なかった以上、この文章はまったく「非公式」の見解、と言うことになる。また、ネットの「海外安全情報」も確認したが、このことに関してはなんにも触れていなかった。これはどういう整理をすればいいのか、わたしには全く分からない。

これを読んで敢えてデモ行進に参加しようと思う人は、まずいないだろう。わたしもこれを事前に読んでいて、しかもその上でホストの人に誘われたらとても躊躇していたと思う。ということは、この文章は少なくとも「デモ行進に参加する権利」をわたしに認めないと感じさせるような文章ではないのか?在シドニー日本総領事館はそのような権限を持っているのか?今、日本以外にいるわたしの権利は何があって何がないのか?

実はこの文章を読んでから、わたしはそのことが気になってしかたがない。わたしはこの国にいて、一体、何に護られているのか?何を護られているのか?わたしは法律の専門家ではないので、詳しいことは分からない。が、わたしの権利は一体、この国にどの程度護られていて、どの部分が護られないのか、それを知らないと怖くて生きてはいけない。

まず、日本での最高法規と言えば「日本国憲法」だ。ここでは日本国民の「権利」について記載されている。わたしたちはこれによって「法の下に平等」であり「思想の自由」や「良心の自由」、「信仰の自由」「集会、結社の自由」「職業選択の自由」「学問の自由」「婚姻の自由(ただし、同性結婚は今のところ認められていない。でもこれって、この憲法が作られたときに、同性愛者のことが全く考えられていなかった結果だという考え方も出来る。なぜならこの条項ができたのは、明治憲法では、個人の自由で結婚が出来なかったからだ。そのことを防止するためにこの条項が作られた)」、「言論の自由」「出版の自由」「国籍離脱の自由」などが保障されている。

調べていくうちに、日本国憲法というものは「基本的人権の原則規定」があり、それを元にして「自由権」「参政権」「受益権」「社会権」「国民の義務」に分かれていることを知った。しかし、基本的人権というものは憲法97条で「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と書かれているので、在外邦人が不当に殺されたとしても、殺される直前までは「基本的人権は尊重されている」と書いてある文章に出会って「え!@@;」という感じがした。確かに基本的人権は空気のようなものだが。。これじゃ怖くて他の国では生きていけないじゃん。憲法97条って、そういうもんなの??そのためにあるもんなの?

また、法律には属地的なものと属人的なものに分かれることを、文部科学省のサイトで知った。

これを元に、一体、憲法何条が属地的なものであり、属人的なものであるのか調べたかったが、ネットでは限界だった。これはあくまでも「解釈」の問題であるらしい。今のところ分かったのは、憲法15条の参政権は属人的なものであると解釈されているということだ。だって、在留届を出してきたときに「在外選挙登録」も一緒にしてきたから。その権利は認められていると言うことは分かる。

逆にこの権利を認められていると言うことは、基本的人権の原則規定も属人的なものなんじゃないかなあ、と思うが、そこのところはよく分からない。そしてデモをする権利(おそらく「集会、結社の自由」だと思われる)は、今のわたしは憲法によって保障されているのだろうか?あのデモは、オーストラリア国内のデモ、というよりも戦争反対のデモ(ブッシュに反対という意味合いも含まれていたけれども)だったし、そうでなければわたしは参加していない。もし「オーストラリアの労働者の賃金値上げ要求のデモ」だったら、わたしは参加していない。

以前、イラクに行って人質になった人がいて、その頃は「自己責任」という言葉が盛んに使われて、人質になった人は非難された。しかし「自己責任」という言葉の本来持つ意味というのは「他の人に意見を強要されない自由」ということであり、自分の行動は自分で決定できることである、と書いてあった。もちろん、自分の責任においてもし何かあったら自分で責任を取ってね、という意味もある法律も存在する。が、人権においての「自己責任」と言うのは、個人で自由に行動する権利であるのだ。あのときに「木偏にホワイト」という某参議院議員(もう辞めた)が「反日的分子」などという言葉を用いて、彼らを国会で非難し、その言葉が議事録から削除されたということがあったが、このような国会議員が日本に存在するというだけで、外国に暮らす人間にとって空恐ろしいと感じざるを得ない。

逆に今の首相は奇しくも「人命は地球より重い」と言って「超法規的措置」をハイジャック犯に施した元首相の子供だが(ただ、わたしはこの考えは非常に素晴らしいとは思うが、施した相手が悪かったと思う。彼らによって日本国民の「権利獲得運動」に対するイメージが非常に悪くなった)、まぁ、父と子供の人格は違うとはいえ、少しホッとしている部分はある。というか、そう言うことに振り回さざるを得ない、ちっぽけな自分なのだ、ここでは。そのことは本当に痛感させられる。

そして、在外邦人は「外務省設置法第四条九」の「海外における邦人の生命及び身体の保護その他の安全に関すること」によって、基本的には日本国から護られている存在だ。が、一体、何が護られて何が護られていないのか、これだけではよく分からない。日本国民の持つパスポートは

パスポート







と言うもので、これによって日本の外務大臣から、渡航先の当該機関に保護扶助を要請されている。しかしわたしはこれを読んでも、一体何を保護されて扶助されるのか、さっぱり分からない。在シドニー日本総領事館でわたしは「海外で困ったら(大使館・総領事館のできること)」というパンフレットをもらってきた。しかし、これを読むと「大規模な自然災害や騒乱・戦争などの緊急事態が起きたとき」に「退避を支援します。」と書いてある。APECのデモ行進が騒乱に当たるのかはよく分からないが、、やはり逃げなければならないのか?(支援だから、強制的ではないにしろ)わたしの「集会、結社の自由」よりもこちらの方が優先されるのか?

もちろん、ある一定のこちらの法律は従わなければなるまい。日本の交通法規がオーストラリアで通用したら大変な混乱が起きる。が、わたしの「基本的人権」は今、日本国憲法で保障されているのか、もしそうでないとしたら「オーストラリア憲法」で保障されているのか(まさか)、その区別がはっきりしなくて、このことに気がついてからのわたしは、恐怖を感じ続けている。

しかし一方、憲法12条により「この憲法が国民の保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と決められている(ただし、濫用してはならないけれども)。この権利がある限り、今、外国にいるわたしもそれを努力して保持し続けていかねばならないかなとも思う。

【付記】在シドニー日本総領事館の注意喚起の中で「推定1万人以上のデモ行進を計画している」とあるが、これは当初からオーストラリア政府はこのデモに「1万人参加する」と事前から見ていたことを推測できる文章である(それとも事前にデモ行進団体が申請していた人数なのか?ただそれをそのまま鵜呑みにして、在シドニー日本総領事館の「見解」にしてしまってもいいものなのか?)。しかし、デモ行進後の警察発表は5千人であり、新聞に至ってはたったの3千人だった。デモ行進主催者側の発表だけが1万人だった。わたしは一体、何を信じていいのかよく分からない。もしかしたら、この国の怖い一面を見てしまったのかも知れない。

テーマ:留学日記 - ジャンル:日記

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